NEWS&EVENT

【関連イベント】ABS第2回世界大会、終了。

2018年7月10日にウィーン大学で始まったボーダースタディーズの国際学会Association for Borderlands Studiesの世界大会が7月14日にブタペストで無事終わりました。初日の模様はすでにお伝えしましたが、2日目の11日はエドワード・ボイル(九州大学)、ミズラ・ラフマン(インド工科大学)らの司会で引き続きアジア・ボーダースタディーズのセッションが組まれました。北大拠点からは加藤美保子がロシアの主権をめぐる問題を報告しました。またこの日の最終セッションでは、ジャナジャイ・トリパティ(南アジア大)、クリシュネンドラ・メーナ(JNU)など北大GCOE時代のボーダースタディーズ・サマースクールの卒業生たちが南アジアにかかわるボーダーのセッションを作り、好評でした。

 

 翌13日はボーダー関連学会で定番の、国境を越えたフィールドワークが実施されました。3つのグループに分かれてハンガリー入りをしましたが、もっとも人気があったのが、1989年にパン・ヨーロッパ・ピクニックが行われた現地の視察でした。これは「ベルリンの壁」崩壊を引き起こしたことで知られる、ハンガリー・オーストリア国境開放に関わるイベントですが、当時のピクニック組織者による現地解説は、どのようにして社会主義体制下の厳しい国境管理に風穴を開けたのかをめぐるエピソード満載で、臨場感溢れるものでした。また、冷戦期のハンガリー国境の「要塞化」の変遷、さらには現在の対セルビア国境のフェンス施設の現状についての解説などもあり、今回のフィールドワークはボーダースタディーズのみならず、ポスト社会主義研究や国際関係を包括した中身の濃い内容となりました。

 

 14日はブタペストの街中にある中欧大学に会場を移し、大会が続けられました。その中の一つとして、欧州と北東アジアを結ぶボーダーツーリズムのセッションが組織され、ツアー研究の学問的可能性を、中露国境、中欧国境から南欧カタロニア、北欧デンマーク・ドイツ国境といった多岐にわたる事例をもとに、タイムライン、透過性、社会構築などの観点から議論しました。15日午前で大会は終了し、無事、散会となりましたが、11日のウィーンのタウンホールでのレセプションではボーダースタディーズの更なる展開について大いに語られたようです。

                                              (岩下明裕)