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第14回APF日米中ロ4カ国フォーラムの開催

2016年9月15日(文責・加藤美保子)

第14回APF日米中ロ4カ国フォーラム開会式2016年9月15日、KKRホテル札幌において一般社団法人アジア太平洋フォーラム(APF)の主催による「第14回APF日米中ロ4カ国フォーラム」が開催され、北大スラ研拠点からは加藤美保子が参加しました。フォーラムはテーマごとに①外交安保セッション、②政治経済セッション、③文化社会セッションの三つに分けられ、各セッションに日本、アメリカ、中国、ロシアの立場から4人の専門家が登壇し、率直な議論を闘わせました。

第14回APF日米中ロ4カ国フォーラム 外交安保セッションフォーラムは今日これから国後・択捉に向かうという鈴木貴子衆議院議員の挨拶で幕を開けました。「外交安保セッション」では、ロバート・エルドリッヂ氏より、日米同盟の起源と近年もっとも大きな作戦の一つであった東日本大震災での在日米軍と陸上自衛隊の連携の経験から、日米間での相互運用体制が高まってきていることが指摘された。このことから、アメリカ大統領選で争点になっている日米同盟の見直しについて批判的な見解が示された。また、張玉萍・在札幌中国副総領事からは第13次5か年計画が始動する2016年の経済の特徴と、アジア太平洋地域への貢献について報告されました。アンドレイ・ファブリーチニコフ・在札幌ロシア総領事からは、北海道とロシア極東地域の地域間交流の現状と、ビザ制度・交通ルートにおける問題点について触れられた後、12月に予定されているプーチン大統領訪日と首脳会談においてウィン・ウィン関係が促進されることへの期待が示されました。最後に、飯島俊郎・外務省総合政策局参事官より、外交における人的要素の重要性と、交渉の中で優位に立つ要因として在任期間が長く問題や交渉の仕方についての知識が蓄積されていることが説明されました。この意味で、現在の安倍首相、岸田外相の日本外交の体制の安定性と戦略・実行力に期待する見方が示されました。

第14回APF日米中ロ4カ国フォーラム 政治経済セッション「政治経済セッション」では宮家邦彦氏が、アメリカ大統領選でトランプ候補が熱狂的支持を獲得していることを例に、格差の拡大によって既存の政治勢力や権力、外国(人)に対する大きな反発、不信感、怒りが渦巻いている世界的な現象を「ダークサイドの覚醒」という言葉で説明しました。また、これからのリーダーに求められる資質は、このダークサイドをコントロールする力量であることも指摘されました。中国で弁護士として活躍するティボール・バランスキー氏からは、「中国ビジネスに横たわる法治と人治」というテーマで、司法の観点から中国でビジネスを行う際の問題的・日本との違いについての講演がありました。余建華・上海社会科学員研究員からは、習近平国家主席が提唱した「一帯一路」構想を実現する上で見込まれる安全保障面での挑戦についての見解が示されました。最後に、コンスタンチン・サルキソフ・山梨学院大学名誉教授からは、現在のアジア・太平洋情勢を概観したうえで、12月の日ロ首脳会談を見据えて北海道とロシア極東の越境(クロスボーダー)関係の可能性について講演がありました。

第14回APF日米中ロ4カ国フォーラム 社会文化セッション「社会文化セッション」では、陳言・日本企業研究院執行院長より、「中国メディアの実力と課題」というテーマで、共産党系メディアとインターネットニュースやスマホニュース、ブログ、「微信」等の新しいメディアの違いについて説明され、中国におけるナショナリズムの高揚の背景としてメディアの問題(売れるにはナショナリズム)が指摘されました。アレクサンドル・クルマーゾフ・ロシア大使館一等書記官からは、ロシアで20年ほど前から高まり始めた日本文化・日本食に対する関心とその背景、ロシア人の魚や寿司の好みについて、国民文化の視点から語られました。武田泉・北海道教育大学准教授は、北海道の観光資源と交通の観点から、「最北端」ではなく「北の玄関口」としての道の可能性を指摘しました。とくに、北海道は北極経由の航路・航空路のアジア側の玄関口であり、地政学的に見て将来性のある地域だという見解が示されました。また、ロバート・エルドリッヂ氏から、アメリカ大統領選挙を事例として、アメリカ型民主主義、政治システムの問題点についての考察が提示されました。

最後の総括では、各セッションの議長を務めた田中健二・APF理事長、兵頭慎治・防衛省防衛研究所地域研究部長、高田喜博・北海道国際交流・協力総合センター上席研究員によって、今回のフォーラムの組織の舞台裏や、12月の日ロ首脳会談、アメリカ大統領選の結果を受けて、各セッションの議論が今後どのように進展しうるかについて述べられました。今回のフォーラムでは全体として、アメリカ大統領選の動向が不透明な中で、当面動きそうな関係として、日ロ間の首脳会議、領土交渉への関心が高まっていることが窺えました。