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【開催報告】ラウンドテーブル「北東アジアをめぐる日韓の対話:平和、安全保障、エンパワーメント」

 2020年1月12日(土)に、韓国の中央大学校でラウンドテーブル「北東アジアをめぐる日韓の対話:平和、安全保障、エンパワーメント」が開催されました。このイベントは、人間文化研究機構ネットワーク型基幹研究プロジェクト「北東アジア地域研究推進事業」北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター拠点と韓国中央大学校境域における和解と共生研究センター(RCCZ)の2回目の共同企画として実施されました。当日は土曜にもかかわらず33名の参加がありました。

 第一セッションは、安全保障と平和をテーマに、岩下明裕(SRC)、ヒョン・デソン(韓国海洋水産開発院)、加藤美保子(SRC)、ナム・サング(東北亜歴史財団)が登壇し、北東アジアのパワーバランスの変化や北朝鮮の脅威に対する対処の選択肢などの論点について、国家レベルの対立構造のみならず、実際の人の移動の動向や貿易、文化交流の実態についても意見交換が行われました。

 第二セッションは、市民社会とエンパワーメントをテーマに、イム・ギョンファ(RCCZ)、池直美(北大HOPS)、ハン・ヘイン(成均館大学東アジア歴史研究所)、天野尚樹(山形大学)、リ・シンチョル(歴史デザイン研究所)が登壇し、北東アジア情勢の安定のために、国際社会はどのような代替策や解決法を見いだせるのか、上(国家)からの保護と同時に下からのエンパワーメントはどのように行われるべきか、というテーマについて議論されました。このセッションでは、歴史認識をめぐる国家間対立における歴史家の役割から、国家のセイフティネットからこぼれ落ちる移民や貧困の問題にどう向き合うべきか、という多岐にわたるテーマが話し合われました。

 過去1年間を振り返ると、徴用工問題への対処をめぐって日韓関係は複雑に拗れている状況です。しかし、北東アジア全体の平和に目を向けると、日韓両国の政府だけでなく、市民一人一人の和解と協力を模索する努力が必要であることに気付かされます。今回のラウンドテーブルは、関係改善と相互理解を深化するための方策を導き出し、両国間のネットワークを強化する小さな一歩となることを目指す試みでもありました。                            (加藤)